大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)95 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人本間大吉の上告趣意に末尾添附の書面記載のとおりであつてこれに対する

当裁判所の判断は次のとおりである。

第一点について。

然し、原判決判示第一事実にいわゆる喧嘩とあるのは、これをその挙示引用の証

拠特にA、Bに対する検察事務官の各聴取書中の同人等の各供述記載と対照すれば、

いわゆる殴り合いの喧嘩即ち論旨にいう暴行脅迫を伴つた喧嘩を指称すること明ら

かである。されば右喧嘩の際判示の巡査Aが被告人等を逮捕しようとしたのは、正

に同人の適法な職務執行行為というべく、原判決には所論の違法はない。論旨は理

由がない。

同第二点について。

然し、原判決引用のCに対する検察事務官の聴取書の中には、同人の供述として、

「本月(一〇月)一四日は私の当務でありまして多分夜の一〇時項であつたと思い

ますが小綱町派出所で勤務中の折柄、約二〇米位筋向いのDさん方から朝鮮人が三

人程暴れ込んで来たから直ぐ来て下さいとの届出がありましたので、私はその時制

服制帽でモーゼル拳銃を腰に吊つた巡査の外勤姿で直ぐD方へ馳せつけました。す

ると後で名前を知りましたE、F及び他に一名の朝鮮人がD方前路上で日本人三、

四名と殴り合いの喧嘩をして居りましたので、私はこの喧嘩の中に入り取鎖めにか

かつたのであります。処がEは私の胸倉を手拳できつく突き込んで来ましたので、

私は其の力の反動でよろよろとする処を傍に居たFが手拳で私の左頬をきつく殴り

つけ、私はジーンと耳鳴りがして倒れそうになりました、途端にFは矢庭に逃げ出

しましたので、私は張り切つてFを追いかけましたがとうとうFの姿を見失いまし

- 1 -

た。」と記載されている。これを通読すれば右巡査Cがその職務の執行として喧嘩

を制止すると同時に被告人等を逮捕しようとした際被告人等に殴打された趣旨であ

ること自ら明らかである。さればこの点に関する原判決判示事実とその引用証拠と

の間に齟齬するところはないから論旨は理由がない。

同第三点について。

然し原判決がその挙示引用の証拠特に被告人及びCに対する検察事務官の各聴取

書中の同人等の供述記載によつて所論原判決判示第一事実の被告人と金正一の共謀

の事実を認定したことは肯認できるのであつて、右認定が実験則に違背するものと

もいえない。されば原判決には所論不備の違法なく論旨は理由がない。

よつて旧刑訴法四四六条に従い全裁判官一致の意見により主文のとおり判決する。

検察官 田中巳代治関与

昭和二六年五月一日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎

裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!